マール社が発行している
「ダイナミックポーズ・ドローイング:躍動感のあるキャラクターを描く」
って、どんな本?どんな内容なの?イラストの参考になる?
という方へ、絵の仕事をしている私が読んだ感想&レビューを書いてみたいと思います。
遅くなりましたがこんにちは、イラストレーターとして活動している七海ルシアです。
まず表紙にもあるように「躍動感のあるキャラクターを描く!」のがウリのこの本書。
よく見かける描き方の本は、ほぼ最初に骨格や筋肉の解説が入ることが多いもの。
ですがこの「ダイナミックポーズ・ドローイング」は始めに、遠近法入門から始まるのがポイントです。
中身をお見せすることが(大人の事情で)出来ないので、
ザックリと解説していきたいと思います。
ダイナミックポーズ・ドローイングはどんな本?
この本は、主に「人間の動き」にスポットを当てて解説している、いわゆるイラストの技法書になります。
この本のイラストおよび解説を書かれてる方は、マーベルのマンガを描いたりイラストレーションの講師をやるほどのプロのアーティスト。
早い話、海外のプロの漫画家さんが描かれた、お絵かきを上達・スキルアップさせるための教科書、なんですね。
「ダイナミックポーズ・ドローイング」では最初に。遠近法、いわゆるパース取りや、立体感を学びます。
これによりリアルな動き、躍動感のあるアクションポーズの他、人間の体を様々な角度から描けるよう、学ぶことができます。
この本がオススメなのは、これから
・イラストレーター(特にTCGなどのキャラの1枚絵)
・キャラクターデザイナー(リアル頭身の男性)
・漫画家(格闘シーンなどアクションシーンが多いマンガ等)
を目指してる方々でしょう。
人間を下から見たアングルもあるので、
・3Dキャラクターデザイン
を始めたい方、立体感を掴みたい方にも参考になるかもしれません。
買っても後悔しないよう、どんな方にオススメなのか、良い点とイマイチな点を書いていきます。
ダイナミックポーズ・ドローイングはこんな方にオススメ!!
ちょっとオーバーすぎるぐらいのポーズが描きたい!描いてみたい!という人向きの本書。
オススメの職業を書いてみましたが、はたして初心者向けなのか、プロにも使えるのか、何とも判断が難しいと言えます。
どんな知識・情報が欲しいのか、が人によってそれぞれ異なるからです。
そこで私が独断と主観で選ぶこの本が役に立つ人とは・・・ズバリ
今このような悩みをかかえてる方にオススメ!!
・人間を描く上で基本を知りたい
・人を描いても、全身デッサンでいまいちバランスがつかめない
・人物のポーズがいつもワンパターンになりがち
・カッコいいポーズのデザインが頭に浮かんでるのに描くとおかしくなる
・背景とキャラクターの構図のバランスが取れない
・漫画を描いてるので様々なポーズを描く必要がある
・男性のアクションポーズを描く機会が多い
・スーパーマンなどのヒーロー、人型のモンスターを描きたいと思っている
更に補足すると、
顔ばかり描いてて体を描くのが苦手な方
立ちポーズを描いてても何か違和感を感じる方
ラフの時点でバランスが取れず、何度も描きなおしてしまう方
人物の気持ちを体・動きで表現したいマンガ家さん
の方に本書は役に立つのではないでしょうか。
初心者の方にも立ちポーズ、歩き、走るなど、基本の動作を前半にしっかり解説されています。
本書の後半は、格闘シーンのポーズなども載っており、攻撃や防御などのイラスト解説になります。
上級者の方でも、遠近法はなかなか難しかったりするので、手前に迫ってくるポーズや、後ろや下から見たアングルなどが苦手な方には参考になるかと思われます。
とにかく、人物のポーズや構図取りの幅をもっと広げたい方にオススメです。
これを求めてる方にはオススメしないかも…
この本は最初に遠近法の解説を描かれてるだけあって、遠近法、いわゆるパース・奥行き感をそれなりに身に着けないと、少し難易度が高い本となります。
イラストでパースというのは「近いものは大きく、遠いものは小さく見える」という、主に背景や風景を描くときの表現で用いられてる言葉みたい。
もちろん遠近法の取り方・描き方は本書の最初の方に描いてあるので、繰り返し練習することで学んでいけるかと思います。
むしろ、オススメできないのはこのような場合かと思います。
・人物の骨格や筋肉など詳しく知りたい
・いつも頭身が高いキャラクターを描いてる
・たくさんのアクションポーズの参考資料が欲しい
・関節を伸ばしたり、曲げた時の筋肉の細かな動き・描き方を知りたい
骨格や筋肉の部位名称も載ってはいますが、かんたんに確認する程度と思った方がいいでしょう。
例えば、足のくるぶしが、内側・外側で同じ高さに描かれているなど、少し正確さが不十分な所があるからです。
(※本来、人間の足のくるぶしは、内側の方がやや高い位置にある)
人物や骨格を正しく学びたいのならアナトミー等の書籍の購入をオススメいたします。
次に、いつも頭身が高いキャラを描いてる人へオススメできない理由として、本書は比較的リアルな人間の頭身で描かれているからです。
作者がマーベル等の漫画を描いてる方なので、少女マンガのように細身でシャープといいますか、細マッチョが好みの人にはちょっと合わないかもしれません。
また手や足も細かく描き方が載ってるですが、ほとんど男性がメインで女性のポージングはやや少ないです。
この本の目的は、あくまでアクションポーズを描けるようになるための技法書です。
ポーズが沢山載っている本を探してる人や、参考資料として探してる人には物足りないかと思われます。
何故ならば、本書の後半にあるポーズ集はそんなに多くありません。
また、かなりクセが強く、「このポーズ、どこで使うんだろう?」というような使用キャラクターが特定されるものがあります。
例えば、水泳選手の飛び込みを元に、スーパーマンや仮面ライダーが飛ぶようなポーズも紹介されています。
ですがこれが欲しい場面ってかなり限られるかと思います(これが欲しい人には助かるかもしれません^^;)
ちなみにこの本はオールモノクロ本であり、約半分はブロック人間で解説となります。
例えば、ポーズを決めて上記のようにブロック人間を描くとします。
実際に私たちが描く際にはそこから、お尻から太もも、いわゆるヒップラインを肉付けしていく必要があるのですが、そういう細かな部分の解説はなかったりするので、要注意です。
肘や膝を曲げた時の筋肉の形、それにあわせた塗り方などの点においては役に立たないかもしれません。
これに関しても筋肉の動き、流れを知りたいだけの場合は、別の本をオススメします。
逆に言えば、筋肉の知識があり、正しく肉付けができる人、ならばすぐに本書が生かせるでしょう。
どちらかというと、ラフの段階でポーズを考える&決める時に役に立つ本だと言えますね。
ちなみに、筋肉の知識を深めつつ参考にしたいのなら、「スカルプターの美術解剖学」がオススメです。
「美術解剖学」の方にはアクションポーズは全く載ってませんので、今回の「ダイナミックポーズ・ドローイング」と併用して使うと良いでしょう。
総括・まとめ
まとめますと、この本は人間の動きを表現するための情報がひととおり載っている本です。
人物デッサンで上手くバランスが取れない方、単調なポーズしか描けなくて悩んでる方、もっと人物の動きを表現できるようになりたい方へオススメできます。
絵を描くラフの段階でポーズを決めたりする時に役立ちます。
カッコいいポーズを描きたくて、頭の中に浮かんではいるけれど、上手くラフに出来ない人や、線画にするとバランスが崩れる、という方の手助けになるかと思います。
お絵かき初心者の方には難しい部分もあるとは感じます。
でも絵を描いていく上で遠近法や骨格の知識は避けて通れないため、いずれ役に立つでしょう。
「動き」「ポーズ」がメインのため筋肉が主になので、それ以外のイラストの塗りや、仕上げに関しての情報はありませんのでご注意ください。
イラストの仕上げに関しては、洋服の描き方やハイライト・影の入れ方など、他の参考書と併用して使うのがオススメです。
今後も気になるイラストの本や、イラストの技法書を解説、レビューをしていこうと考えています。
それではまた!